研修会報告
四国ミュージアム研究会・こうちミュージアムネットワーク合同シンポジウム
「まちとひとと博物館」
開催日:平成21年2月22日・23日 
会場:絵金蔵・弁天座(香南市赤岡町)

<内容>
2月22日 13時~17時  会場 弁天座
司会 田所菜穂子氏(香美市立やなせたかし記念館)
アトラクション
基調講演
「まちをタノシム~地域資源再生のまち~」畠中洋行氏(特定非営利活動法人NPO高知市民会議事務局長)
報告
「絵金蔵“こんなまちええなあ”の試み」横田恵氏(絵金蔵蔵長)
「まちづくり観光と博物館」渋谷啓一氏(香川県観光振興課)
「市民とミュージアムの協働の可能性」徳永高志氏(NPO法人クオリティアンドコミュニケーションオブアーツ代表)
2月23日 絵金蔵見学会・赤岡町まちあるき


シンポジウムに参加して
平成21年2月22日・23日の2日間、香南市赤岡町にある弁天座と絵金蔵を会場に「四国ミュージアム研究会・こうちミュージアムネットワーク合同シンポジウム」が行われた。今回のテーマは「まちとひとと博物館」。博物館が、地域とどのようなつながりを築き、またどのような役割を果たしていくことができるのか。地域住民が中心になって活動する絵金蔵を軸に、様々な立場や角度から講演・報告が行われた。
まず基調講演では、「まちをタノシム~地域資源再生のまち~」と題し、これまで赤岡町のまちづくりに取り組んできたNPO高知市民会議事務局長の畠中洋行氏が、町に再び活気を取り戻すための住民活動を紹介した。畠中氏は、専門家が町の方針を決めていくのではなく、あくまで町を良く知る住民が主体となって議論し、模索していくことが重要であると述べた。その上で、赤岡町の場合、住民参加のワークショップを重ねることにより、住民自身によって「まちに昔からあるモノ・ヒト・コトの魅力的な資源を再生する」という考え方が整理されていったという。これが、今日の赤岡町のまちづくりの土台となっている。
また報告では、「絵金蔵“こんなまちええな”の試み」と題し、絵金蔵蔵長の横田恵氏より蔵の特徴や運営方針について報告があった。蔵の活動を支えるのは、住民ボランティアである。当初は、絵金のことを詳しく知る人は少なかったそうだ。ただこの町が好き、もっと多くの人にこの街を知ってほしいという思いから、希望する方が大半だったという。しかし、蔵の活動にかかわる中で、自ら絵金について学ぶようになり、施設以外の場所でも、町を歩く観光客やこれまであまり関心がなかった町の住民に絵金のこと、蔵のことを自らの言葉で紹介する動きが次第に生まれていったそうだ。
このほか、香川県観光振興課の渋谷啓一氏の「まちづくり型観光と博物館」では、団体パック旅行から、個人の旅行プランへと、観光ニーズが変化していることを挙げ、まちづくりと博物館の協働の可能性について報告があった。また、NPO法人クオリティアンドコミュニケーションオブアーツの徳永高志氏からは、「市民とミュージアムの協働の可能性」と題し、市民と施設側が対等の立場で運営が進められている長野県の芧野市美術館の紹介があった。
 今回あった成功事例をとおして、地域独自の文化や歴史を生かしたまちづくり進めていくために、地域住民の主体性が欠かせないことを、改めて認識させられた。当館のような歴史系博物館が、地域に果たす役割とは何かと考えたとき、その一つが報告全てに共通するキーワード「地域資源の発掘」ではないかと思う。まだ地域に埋もれている史料を掘り起こし、光をあてていく。そこで得られた新たな歴史が、より魅了的なまちづくりの土台になるのだと思う。それが地域に根付くという意味で博物館が果たす役割の一つではないかと、シンポジウムを終えて感じた。
(土佐山内家宝物資料館 田井東 浩平)